自社の強みは見つけにくい!具体例で理解する、4つのフレームワークから自社の強みを発見し、成長戦略を構築する方法

自社の強みを理解することは、競争の激しい製造業界で成功を収めるために重要な鍵となります。
しかし、多くの中小企業は、自社の強みを見つけるのに苦労しているのが実情です。

この記事では、4つの有効なフレームワーク(PEST分析、3C分析、SWOT分析、クロスSWOT分析)を活用して、自社の強みを発見する方法を具体例とともに解説します。

自社の強みを見出すことが難しい理由

自社のことは、自分が一番知っているはずなのに、なぜ自社の強みを見出すことが難しいのでしょう。
灯台下暗しという言葉通り、自分のことは良く知っているという思い込みにより、外部から見た自分を見誤ってしまうことから、正しく理解することが困難なのです。

例えば、自社が強みだと思っていることは、他人から見たら、実は弱みであったり、弱みだと思っていることが他人から見たら強みだったりするのです。

例えば老舗の和菓子屋さんにとって、創業○○年というのが強みだと思っていたとします。
しかし、和菓子屋さんの顧客のターゲットが若い人であった場合、強みと思っている「創業○○年」というのは、「時代遅れ」「時代のニーズに合っていない」という弱みと捉えられかねません。

今回ご紹介するフレームワークは、誰にターゲットを置くのかという点も再認識することで、自社の強み、弱みを見出すことができます。
これらのフレームワークは、できるだけ年齢層や性別の異なる人や第三者(外部)からの意見も取り入れながら作り上げることをおすすめします。

自社の強みを見つけることが難しい理由は、以下の理由が挙げられます。

  • 客観的な視点の欠如
    内部の視点に偏り、自社の本当の強みを正確に評価できない場合があります。
    他者との比較が不足するため、強みが見えづらくなります。
    また上述の老舗和菓子屋さんのようにターゲット顧客を見誤っていると、自社の強みや弱みを見誤る場合があります。
  • 変化する市場環境への対応の遅れ
    外部環境の変化に迅速に適応できず、以前は強みだった要素が陳腐化している場合もあります。
  • データや情報の不足
    自社の業績や顧客ニーズに関するデータが十分に収集・分析されていないため、強みを見極める材料が不足しています
  • 日常業務に追われるため、全体像を把握する余裕がない
    日々の業務に集中するあまり、自社の競争優位性や市場でのポジションを冷静に分析する時間が取れないことがあります。

フレームワークを使うメリット

これらの課題を解決するために、フレームワークを活用することには以下のようなメリットがあります。

  1. 構造化されたアプローチで効率的に分析できる
    PEST分析や3C分析などのフレームワークを活用することで、重要な視点を整理しながら効率的に分析を進めることが可能です。
  2. 客観的な視点を取り入れることができる
    フレームワークを使用することで、外部環境や競合他社との比較が容易になり、自社の強みをより客観的に理解できます。
  3. 戦略的な意思決定をサポートする
    クロスSWOT分析やPEST分析を通じて、自社の強みを最大限に活用するための戦略を具体化できます。
  4. 変化する市場環境に対応しやすくなる
    フレームワークは環境変化を考慮した分析を促進するため、適応力の向上に役立ちます。

PEST分析で外部環境を把握する

PEST(ペスト)分析とは、自社を取り巻く外部環境が現在もしくは将来的にどのように影響を与えるかを把握・予測するためのフレームワークです。
Politics(政治的)Economy(経済)Society(社会)Technology(技術的)の4つの観点で、外部環境を分析する手法です。


PEST分析は、主に事業戦略(経営戦略、海外戦略、マーケティング戦略など)を策定する際に使用されます。

事業を立ち上げる際には、自社の状況を把握するだけではなく、外部環境にどのように影響を及ぼすか、及ぼされるかを把握しておく必要があります。

Politics(政治的)法規制、国の政策、政府の動向、外交関係の動向など
Economy(経済)景気、インフレ、デフレなどの経済状況など
Society(社会)人口増減、世論・社会の意識、教育、健康、文化など
Technology(技術的)技術革新、技術トレンド、AI、IoTなど

以下に具体的な製造業の例を挙げてみます。
例えば、仮想企業、金属加工業A社の場合を考えてみます。

Politics(政治的)自治体の産業振興策や補助金制度の利用可能性がある
Economy(経済)取り扱っている特殊金属に対して、需要が増加見込みがある
Society(社会)近隣企業との協力体制強化により地域密着型ビジネス展開の可能性がある
Technology(技術的)最新加工技術やデジタルツールの導入による生産性向上

詳細はもっと掘り下げや具体的な調査(顧客の調査や補助金の内容など)が必要ですが、A社の外部環境による事業戦略案としては、

「地域密着型の戦略や需要の見込みのある特殊金属加工を軸に、自治体の支援を活用しながら、新技術を導入することで、競争力を維持向上する」

ことが、有効であると考えられます。

3C分析で基本的な視点を確立する

3C分析は、Customer(顧客)Company(自社)Competitor(競合)の3つの視点で自社を分析する手法です。

3C分析は3つの要素を分析することで、自社を取り巻く環境を理解できます。

前述の老舗和菓子店においても、顧客(ターゲット)が誰なのか、自社の強みや弱みは何か、競合はどこなのか、その競合との違いは何かを明確にしていなければ、必要な対応方法が異なってきます。

この3C分析は、自社のポジションを見極めるために非常に重要になります。
3C分析において、注意する点は以下の点です。

  • 会社として認識を合わせておく
    例えば、社長の認識と、営業部長の認識、現場の社員で認識が異なっていると、ターゲットや競合が異なる場合があります。
  • さまざまな視点で自社を分析する
    自社を分析する場合でも、営業の視点、現場の視点など様々な視点で分析することにより、広い視点で分析することができます。

引き続き、金属加工業A社について考えてみます。

Customer(顧客)ターゲットは地元の産業機械メーカー。
顧客からの要望として、短納期と高精度が求められている。
Company(自社)高精度の加工技術を持ち、経験豊富な職人が在籍。
設備は一部老朽化しているが、特定の分野では業界標準を超える性能を発揮。
多品種少量生産が得意。
Competitor(競合)地元の競合B社は、大量生産に強みを持つが、特注品の対応が弱い。
海外メーカーは安価だが、納期が長い。

SWOT分析で強み・弱みを深掘りする

SWOT分析は、Strengths(強み)Weaknesses(弱み)Opportunities(機会)Threats(脅威)の4つの観点で内外部環境を整理する手法です。

SWOT分析は、経営戦略やマーケティングの意思決定、経営資源の最適化などに活用でき、ビジネス戦略やプロジェクトマネジメントの分野で幅広く使用されています。

SWOT分析の進め方は次のとおりです。

  1. PEST分析、3C分析を行い、目標設定と前提条件の整理を行う
  2. 内部環境に対して、強み(S)と弱み(W)を洗い出す
  3. 外部環境に対して、機会(O)と脅威(T)を特定する
  4. クロスSWOT分析を実施し、戦略案を構築する(次項目参照)

SWOT分析を行う際には、主観を避け、要素を明確に定義することが重要です。
特に「機会」と「強み」を混同しないようにしましょう。

また、SWOT分析では、自社製品に関して社内の関係者を集め、付箋紙1枚に1つの項目を記載し、付箋紙で整理する方法もおすすめです。
第三者からの意見も得られると、自分たちでは気付かなかった視点で分析が可能になります。

例のごとく、金属加工業A社について考えてみましょう。

プラス要因マイナス要因
内部環境Strengths(強み)
・高精度の加工技術を保有
・経験豊富な職人が在籍
・近隣企業との協力体制が構築できている
Weaknesses(弱み)
・設備が老朽化している
・最新の加工技術を保有していない
・デジタルツールに対応できていない
外部環境Opportunities(機会)
・顧客から更なる高精度の製品を求められている
・顧客から更なる短納期を求められている
・取り扱っている特殊金属の需要が増加傾向
Threats(脅威)
・競合B社は大量生産に強い
・競合B社は最新の加工設備を保有

クロスSWOT分析で具体的な戦略を立てる

クロスSWOT分析は、SWOT分析をさらに発展させ、各要素を組み合わせて戦略を具体化する手法です。

<強み(S)×機会(O)>
 自社の強みを活かし、機会をとらえる方法を考案することです。
 導き出される戦略をSO戦略と呼びます。

   戦略の例: 「品質の高さ(S)」×「需要の多さ(O)」=品質の高さを売りに積極的な PR活動を行う

<弱み(W)×機会(O)>
 
自社の弱みを克服し、機会を攻略する方法を考案することです。

 導き出される戦略をWO戦略と呼びます。
 戦略の例: 「商品の生産力が低い(W)」×「商品需要の拡大(O)」 =商品の生産力を上げて販売拡大を狙う

<強み(S)×脅威(T)>
 
自社の強みを活かし、脅威を避ける、対抗する方法を考案することです。

 導き出される戦略をST戦略と呼びます。
 戦略の例: 「品質の高さ(S)」×「商品需要が縮小している(T)」=品質の高さで選んでもらい縮小した市場の中での生き残りを図る

<弱み(W)×脅威(T)>
 
自社の弱みを理解、克服し、脅威の影響を最小限に止める方法を考案することです。

 導き出される戦略をWT戦略と呼びます。
 戦略の例: 「商品の生産力が低い(W)」×「商品需要が縮小している(T)」=ポジションが取れない場合、事業撤退する

引き続き、金属加工業A社について考えてみましょう。
以下が3C分析、SWOT分析結果をもとに、クロスSWOT分析した結果の一例です。

強み(S)弱み(W)
・高精度の加工技術を保有
・経験豊富な職人が在籍
・近隣企業との協力体制が構築できている
・設備が老朽化している
・最新の加工技術を保有していない
・デジタルツールに対応できていない
機会(O)・顧客から更なる高精度の製品を求められている
・顧客から更なる短納期を求められている
・取り扱っている特殊金属の需要が増加傾向
【SO戦略】
特殊金属製品の更なる高精度化を進め、近隣企業と協力し生産能力をさらに向上させる
【WO戦略】
更なる高精度、短納期を実現するため、最新の加工設備を導入する
脅威(T)・競合B社は大量生産に強い
・競合B社は最新の加工設備を保有
【ST戦略】
高精度な加工技術を活かし、独自生産ラインや近隣企業へのアウトソーシングを進め、多量生産を実現する
【WT戦略】
最新の加工設備を導入し、高精度、多量生産を実現する

クロスSWOT分析の結果、強み、弱み、機会、脅威についての、戦略案が出来上がりました
これらの戦略案をもとに、自社がどのような対応を進めていくのか、ブラッシュアップすることで、今後の成長戦略へつなげていくことができます。

まとめ

この記事では、自社の強みを発見し、効果的な成長戦略を立案するために、PEST分析、3C分析、SWOT分析、クロスSWOT分析を活用する方法を具体例とともに紹介しました。これらのフレームワークを活用することで、内外部環境を的確に把握し、現実的かつ実行可能な戦略を導き出すことが可能です。

注意すべきポイント

  1. 客観性を重視する
    自社だけで分析を進めるのではなく、第三者の視点や外部からの意見を取り入れることで、より現実的で実効性のある結果を得ることができます。
  2. ターゲットを明確にする
    強みや弱みを特定する際には、誰に価値を提供するのか(ターゲット)を常に意識してください。間違ったターゲット設定は、戦略全体を見誤る原因になります。
  3. 継続的な見直しを行う
    市場環境や顧客のニーズは常に変化しています。一度の分析で満足せず、定期的にフレームワークを用いて現状を再評価しましょう。
  4. 全社的な認識の統一
    社内での認識が統一されていないと、分析結果に基づいた戦略の実行が困難になります。チーム全体で共通認識を持つことが重要です。
  5. 実行可能な戦略に落とし込む
    戦略は実行されて初めて効果を発揮します。具体的なアクションプランに落とし込み、実行状況を定期的にチェックしましょう。

これらのフレームワークを活用し、分析結果に基づいた戦略を立案したら、実行とフィードバックのPDCAサイクルを繰り返し行うことで、さらに精度の高い意思決定が可能になります。

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