設備導入でやるべき「たった一つのこと」~プロジェクトマネジメントの視点から考える失敗しない進め方~
工場設備導入を検討し始めたものの、とりあえず「設備メーカーを呼んでまずはヒアリング」と考えている方も多いのではないでしょうか。
確かに、その進め方も決して間違っていません。
でもそれは「何が買いたいか」に対する対応であり、「どんなことがしたいか」という問いの答えにはならない場合が多いのです。
メーカーを呼んでも、その装置でできることを細かく説明し、PRはしてくれますが、最終的には、「結局何がしたいのですか」と問われるでしょう。
その場合、「もう一度やりたいことを整理します」と、後戻りしてしまうことになってしまいます。
そのようにならないために、今回は、プロジェクトマネジメントの視点で、まずはどのようなことを考えなければいけないかを、解説します。

設備導入でやるべき「たった一つのこと」
~プロジェクトマネジメントの視点から考える失敗しない進め方~
目次
設備導入が始まったのになぜか不安が残る理由
設備導入を検討し始めたものの、
「何から手を付ければいいのか分からない」
とりあえず、メーカーの言う通りにすすめればいいか。
そんな状態で時間だけが過ぎていませんか。
カタログを集め、メーカーと打ち合わせを行い、仕様や能力、価格の話は進んでいる。
それでも、どこか引っかかるものが残る。
実はこの違和感は、多くの製造業の設備導入で共通して見られるものです。
上手くいかない理由は、技術力ではない
設備導入がうまくいかなかったとき、
「ヒアリングが足りなかった」
「調整が不十分だった」
と表現されることがよくあります。
しかし、設計やプロジェクトマネジメントの観点から見ると、
問題ははっきりしています。
本質的な原因は、
要求が整理・構造化されないまま、設計に入っていることです。
仕様は合っていた、それでも起きた問題
私自身、「仕様はしっかり決めたのに、うまくいかなかった」設備導入を経験しています。
あるクライアント様の依頼で、生産ラインで製品を移動させる旋回クレーンを導入しました。
依頼元の生産部門の担当者とは何度も打ち合わせを行い、
設置位置や使い方についても確認したつもりでした。
しかし導入後、別の担当者から次のような声が上がりました。
「なぜ、この位置に設置したのですか」
「この動線だと、かえって作業しづらいです」
仕様そのものに大きな問題があったわけではありません。
それでも、現場では“使いにくい設備”になってしまったのです。
では、何が不足していたのか
この事例を振り返ると、不足していたのは、設備能力や構造設計ではありません。
足りなかったのは、利用シーンの整理です。
設計の世界では、これをユースケースの洗い出しと呼びます。
つまり、
- 誰が
- いつ
- 何を
- どんな作業で
- どのように使うのか
これを事前に整理できていなかった、ということです。
一人の担当者の意見は確認していましたが、
他の作業者、段取り替え時、トラブル対応時など、
異なる利用シーンまで十分に想定できていませんでした。
設備導入でやるべき「たったひとつのこと」
私がプロジェクトマネジメントの経験から学んだ、設備導入でやるべき「たった一つのこと」。
それは、
要求を構造化してから、設計に入ることです。
「なぜ、今この設備が必要なのか」
「この設備で、何を変えたいのか」
これを言語化して、関係者で共有することが、すべての出発点になります。
このことで、要求が変わった時にも、書類として履歴を残し、変化を管理することも可能です。
設備導入は、
「設備そのものをつくるプロジェクト」ではなく、
「人の認識をそろえるプロジェクト」でもあるのです。
使うべき設計・プロジェクトマネジメント手法(簡易版)
設備導入では、高度で分厚い資料は必ずしも必要ありません。
重要なのは、考える順番です。
① 要求定義(簡易版)
なぜ今、この設備が必要なのか
解決したい課題は何か
成果は何をもって判断するのか
これはプロジェクトマネジメントでいう
要求事項の収集に相当します。
② ステークホルダーの整理
実際に使う人
周辺作業に影響を受ける人
保全・管理を担当する人
全員を満足させる必要はありません。
意見を事前に可視化することが目的です。
③ ユースケースの整理(文章で十分)
通常運転時
段取り替え時
箇条書きで整理するだけで効果があります。
今日からできる実践ステップ
もし今、設備導入を検討しているなら、まずは次の3つをシート一枚にまとめてみてください。
なぜ今、この設備が必要なのか
関わる人・使う人は誰か
使い方をパターン想定できているか
この3点がそろってから仕様検討に入るだけで、
設備導入の失敗リスクは大きく下がります。
まとめ
設備導入は、「正しい設備を選ぶこと」がゴールではありません。
同じ目的を、同じ言葉で共有できているか。
そこからすべてが始まります。
プロジェクトマネジメントの視点を少し取り入れるだけで、
設備導入は、もっとシンプルで、再現性の高いものになります。
この記事では、設備導入を検討する際に、実際にどのような観点で検討を進めるかを整理する方法をご紹介しました。
これらの方法を社内のステークホルダーと共有し、議論することで、工場設備を導入する際の要求仕様が整理されます。
そうすることで、見落としがちな仕様も整理され、導入プロジェクトの成功確率を上げることが可能になります。
設備導入で押さえるべきポイントは次のとおりです。
- 設備導入がうまくいかない原因は、技術力不足ではない
多くの失敗は、要求が整理されないまま設計・仕様検討に入っていることに起因している - 仕様検討の前に、「なぜ必要か」を言語化する必要がある
「なぜ今、この設備が必要なのか」「この設備で何を変えたいのか」を明確にしないままでは、設計の判断軸がぶれてしまっている。 - 一人の担当者の意見=要求ではない
実際に使う人、周辺作業に影響を受ける人、保全・管理する人など、関係者(ステークホルダー)を整理し、意見を可視化することが重要である。 - 設備は仕様だけでなく「使われ方」で評価される
通常運転時だけでなく、段取り替え時やトラブル対応時など、複数の利用シーン(ユースケース)を想定することで、後戻りを防ぐことができる。 - 設備導入では、シンプルな型で十分効果が出る
シート一枚に
① なぜ必要か(背景・目的・動機)
② 誰が関わるか(ステークホルダー)
③ どう使うか(ユースケース:パターン化)
を整理してから仕様検討に入るだけで、失敗リスクは大きく下がります。
設備導入は、「正しい設備を選ぶ作業」ではなく、
同じ目的を、同じ言葉で共有するプロジェクトです。
設計技術やプロジェクトマネジメントの考え方を少し取り入れるだけで、
設備導入は、より再現性が高く、現場に定着するものになります。
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