設備更新と新規設備導入 考え方の違い~失敗しない判断軸~
工場の生産性向上や品質改善を進めていくうちに、現在の設備の限界や幅広い能力が必要になり、設備導入を検討する場合があるのではないでしょうか。
しかし、現在の設備を更新するのか、新規で全く新しい設備を導入するのか、どちらが良いのか迷ったことはありませんか。
設備更新とは、その名の通り既存の設備を撤去して、新しく設備を入れ替えることを指します。
また新規設備導入は、既存の設備はそのままで、あらたに別の場所に新しい仕様の設備を導入することを指します。
よくある誤解は、「設備更新も新規設備導入もやることは同じだ」と考えてしまうことです。
両者を同じように進めてしまい、結局は、
・更新のはずが、想定外に工事(納期、コスト)が膨らむ
・新規導入なのに、現場が使いこなせず形骸化してしまう
・想定以上のトラブルに見舞われ、立ち上げが遅れる
といったトラブルが起きがちです。
では、今回はまず両者の考え方や何が重要なのかポイントを整理してみましょう。

設備更新と新規設備導入における考え方の違い
~失敗しない判断軸~
目次
現場で起こりがち 同じ“設備導入”でも、難しさが違う
設備導入と一言でいっても、
「設備更新(リプレース)」と「新規設備導入(新設)」では、考え方がまったく異なります。
ところが前述の通り、現場では、両者を同じ感覚で進めてしまい、
トラブルが起きがちです。
大切なのは、最初にこう理解することです。
更新は「現状を守りながら変える」プロジェクト
新規は「未来をつくる」プロジェクト
同じ“設備導入”でも、プロジェクトの前提が変わります。
違いは「要求」と「リスクの種類」
設備更新と新規設備導入の違いを、プロジェクトの観点で定義するとこうなります。
- 設備更新:既存要求(現状のやり方)が強い
- 新規導入:新規要求(理想のやり方)が強い
そして、最も大きな違いは
リスクの中心がどこにあるかです。
考えられる中心的なリスク
- 更新:停止リスク・切替リスク・工事リスク
- 新規:要求不確実性(やったことがない)・立上げリスク(どんなことが起こる?)・運用定着リスク
つまり、更新は「止めないこと」が重要になりやすく、
新規は「不確実性(リスク)を潰すこと」が重要になりやすいのです。
「更新だから簡単」ではない
ここで、私の経験を一つ紹介します。
ある工場で、古い設備を新しい設備に入れ替える“更新”を担当したときのことです。
当初は、現場からこう言われていました。
「今の設備と同じ能力でいいです。老朽化のため更新してください。」
正直、私は少し安心しました。
「同じ能力なら、仕様検討はラクだ」と。
しかし、実際に進めると、導入は簡単なものではありませんでした。
- 既存設備の撤去が想定以上に困難
- 配管・配線等の位置が、図面通りではない(現場で改造、変更されている)
- 更新する設備が全く同じではなくコンパクトになっており、現在の作業動線が変わってしまう(基礎のかさ上げが必要)
- 操業を止める期間が短く、切り替え工事の期間や試運転の時間が十分取れない
結果として、設備の仕様は問題ないのに、
設計、工事と切替試運転の調整で、段取りで現場に負担をかけてしまいました。
この経験から学んだのは、更新は
「同じ設備に替える」のではなく、
「止めずに切り替えなければならない制約が高いプロジェクト」
ということに気づきました。
失敗が起きるパターン 同じ手順で進めると崩れてしまう
設備更新で起きやすい失敗
更新は「同等更新」と思われがちですが、実際には次の落とし穴があります。
- 既設の基礎・配管・電源が“想定通り”に使えない
- 現場の工夫で改善していた「暗黙の運用」が引き継げない
- 切替時の段取りが甘く、操業影響が出る
更新は、設備本体よりも周辺設備・工事・切替手順で失敗する確率が高くなるのです。
新規設備導入で起きやすい失敗
新規導入は、「新しい設備を入れる」だけでなく、
多くの場合「新しいやり方をつくる」ことになります。
- そもそも要求が曖昧(何を達成したいか不明確)
- 現場の利用シーンが洗い出せていない
- 教育・標準化・保全の設計が後回し
新規設備は、設備が完成しても運用が立ち上がらないケースが多いのです。
ここが違う 更新と新設 最初に見るべきポイント
1) 設備更新の特徴
更新の基本思想:操業を守りながら切り替える
更新で一番大事なのは、機械の性能よりも 「切替の準備」です。
更新のときに最初に確認したいのは、この3つです。
① 取り合い(つながり)は本当に合うか?
電源、配管、設置スペース、搬入経路などです。
② 工事はどこまで必要か?
床、基礎、配管、配線、既設撤去が意外と効きます。
③ 切替は何日止められるか?
短い停止期間で入替える場合、試運転と調整の時間が不足しがちです。
更新は、設備のカタログを先に見るよりも
「現場で何が起きるか」を先に押さえるのがコツです。
2) 新規設備導入(新設)の特徴
新規導入で一番大事なのは、機械の性能よりも 「目的と使い方」です。
新規のときに最初に確認したいのは、この3つです。
① なぜ今、この設備が必要なのか?
「便利そうだから」ではなく、困りごとを言語化、共通認識します。
② 誰が使うのか?誰が困るのか?
依頼者だけではなく、周りの作業者も含みます。
③ どんな場面で使うのか?
通常運転だけでなく、段取り替えやトラブル時も想定します。
新規導入は「買って終わり」ではありません。
使われて、当初の目的を達成し、定常化させて初めて成功といえます。
更新と新設との比較と注意すべきポイント
| ポイント | 設備更新 | 新設 |
| 難しさ | 工事期間と切り替え(止めない) | 目的と使い方(迷わない) |
| 失敗しやすい点 | 既設とのつながり(基礎、配管、配線等) | 関係者の認識のずれ、運用方法 |
| 最初にやるべき事 | 現場確認と工事、切り替え計画 | 目的、使う人、使い方の整理 |
まとめ
設備更新と新規設備導入は、同じではありません。
それぞれの特徴を理解し、どんなことが重要なポイントなのかを認識して、進めることが重要です。
- 設備更新は「同じ設備に替える」ではなく「止めずに切り替える」こと
- 更新は、性能よりも 工事・既設とのつながり・切替の準備 がポイントになる
- 新規導入は「新しいやり方を作る」ことが重要
- 新規は、性能よりも 導入の目的・関係者・使い方の整理 がポイントになる
- まず「更新か新規か」を見分け、最初に見るべきポイントを変えるだけで失敗が減る
これらのポイントの認識して、進めることで、少しでも失敗するリスクを減らすことができます。
この記事では、設備更新と新規設備導入の考え方の違いについて、ご紹介しました。
技術のかけはしでは、設備導入時にこれらの整理するお手伝いも行っております。
まずは、お気軽にご相談、ご連絡ください。

